「夜の帝王」。なんとも怪しく、耳を疑うネーミングです(笑)。
夜の花街・大阪北新地で働いている私、日本酒が好きだと話すと「どの銘柄が好き?」と尋ねられることもしばしば。
そこで、 にやりとしながら迷わず答えるのがこれ。「夜の帝王」。

殿方たちは皆一斉に大笑いし「この人のことやー!」と、 共に過ごしている上司やお取引先様を指さし、場が一段と和みます。
帝王と呼ばれて、いやな気分にはなりません。ますますご機嫌な時間が過ぎていきます。
夜の社交場でも一役かってくれる、私の心からの「偏愛・溺愛酒」です。

帝王の生まれは、 瀬戸内海に面した安芸の国、広島は竹原市の藤井酒造さん。
竹原市重要伝統的建造物保存地区の中、赴きある街並みの景色のなかに、150年前に建てられた重厚感のある蔵がしっくりと溶け込んでいます。

藤井酒造は、1863年(文久3年)に創業。
酒造りに向いていないとされた広島の水から、軟水での酒造りを確立し、純米酒にこだわりながら素晴らしい日本酒を造り続けています。
その純米酒へのこだわりは相当なもの。
大戦の米不足のときには、政府からアルコールを添加することが義務付けられたのですが・・・。
「造れないなら造らない!」。この信念において、龍勢ブランドは造るのをお休みしていたとのこと。

なんとも頑固一徹、どこまでもまっすぐな蔵です。

さて、この帝王、帝王だけれどギラギラしてません。アルコール度数は低め。
炭素濾過をしていないので、ふんわりした山吹色をしています。
口に含むと優しい旨味と甘味がきて、途端にふらふらと心奪われ。
と思いきや、少し遅れて酸味を感じ意外性にまたどきり。
そして余韻を少し残して、すぐにどこかへ消えて行ってしまわれます。
また会いたくなって、また一口。どうにもはまってしまう、 とても危険なお方です。

冷やしても、そのままでも、 燗にしても。
飲み始めから飲み終わりまで。
決して飲み飽きしない、 いつも優しくまろやかなそれは、毎夜共に過ごしたいと思わせる、 私の理想の殿方のようなお酒です。

データ
龍勢 夜の帝王 特別純米

原料米 八反錦 他
精米歩合 65%
ALC分 15%

藤井酒造 www.fujiishuzou.com

レポート 後藤美沙